planet;nakanotori

天文・鉱物・その他。調べたことや自分用のメモなどを書きます。

星座境界線のデータのこと

星座境界線のデータに関する説明です。

 

 データはここからDLできます。VizieRより。

http://cdsarc.u-strasbg.fr/ftp/cats/VI/49/

 

リンク先にトリセツ的なテキストもありますが、以下に一応の解説を書きます。

 

境界線のデータはオリジナルが1875年分点によるもの(bound 18.dat)。そのほか2000年分点のもの(bound 20.dat)もあります。オリジナルの境界線は赤緯赤経に沿った線で定義されていました。歳差により座標自体が動くけれど、境界線は天球上の元の位置を保つため、定義する点の赤道座標がずれます。そのため2000年分点のデータでは経緯線に沿っていません。2000年分点のデータでは境界線の角の部分を定義する座標データに加えて、一度ごとに補間したデータ行を含んでいます。

 

 

実際に星図を描画するプログラムを書いて気づいた点

  • 星座境界線はその星座の天域を一周する。閉じた線とするには、最後の点はその星座の最初の行のものを使わないといけない。
  • 天の北極があるこぐま座のデータは、天の北極付近に謎の円弧が出来るデータ行が含まれる。天の南極があるはちぶんぎ座も天の南極付近に近づく謎の線が出来るデータ行が含まれる。
  • データ上で隣り合った星座と星座の境界が結ばれないようにするため、星座名の列を利用して区切りをつける必要がある。ただしへび座は2つの閉じた天域で一つの星座扱いなので、配慮しないといけない。幸いCaput(頭) / Cauda(尾)*1でそれぞれSER1とSER2という名前がふられて区別されているため、回避できる。

 

 

 

*1:余談ですが、どちらが頭でどちらが尾なのかごっちゃになりやすいですが、私は「蛇にカプッと噛まれる」で覚えてます。へびつかい座の西側がCaput(頭)東側がCauda(尾)なので、強引ですが"西向く士"よろしく蛇も西向くという連想でだいたいなんとかなると思います。

恒星の固有名に関するデータのこと

IAUのワーキンググループが定めた星の固有名*1のリストを入手する説明です。

 

Naming Stars | IAU このページの下部に固有名のリストがあります。

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固有名、イェール輝星星表のHRナンバー、星座とバイエル符号、実視等級、赤経赤緯などの情報が含まれます。簡単にここからコピペも出来ますが、これとは別にヒッパルコス星表のカタログナンパーなども含まれたデータセットがあります。

 

IAU WGSN 固有名割り当てのワーキンググループのサイトです。 f:id:love_and_sessue:20181023232111j:plain

ここからテキストファイルのデータを参照できます。データは順次アップデートされているようで、当記事執筆時点で2018年9月が最新のようです。

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データは固定長です。スペースを区切りとして読み込むと、例えばName列で"Polaris australis"*2のようにスペースを含んだデータが分割されてしまうので注意してください。

 

 星表の番号は第二列にイェール輝星星表のHR番号がありますが、座標データはヒッパルコス星表の2007年の新版を利用しているようです。

*1:星表のIDナンバーではなく、シリウス、リゲル、アンタレスのような名前

*2:はちぶんぎ座の5.45等星 天の南極に最も近く、南極星のこと

輝星星表のデータを取得する

輝星星表のデータを取得します。

 

【まめちしき】

輝星星表とは、6.5等よりも明るい*1天体のデータベースです。イェール輝星星表とも。肉眼で見える天体のカタログと考えて良いです。主な星表のカタログナンバーや座標データ、実視等級、固有運動などが含まれています。ヒッパルコス衛星以前からある星表ですがJ2000の赤道座標もあり、星座早見やちょっとした星図程度なら十分実用になります。

 

Yale Bright Star Catalog ここからダウンロード出来ます。

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 http://ftp://dbc.nao.ac.jp/DBC/NASAADC/catalogs/5/5050/ ここからでもOK

どちらからDLするにせよ、3つのファイルがあります。

ReadMe  ・・・データの説明書

catalog.dat.gz  ・・・星表本体

notes.dat.gz  ・・・星表の注釈

 

とりあえずカタログ本体をメモ帳で開くと、こんな風景になっています

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 固定長のデータで区切り文字は無し。データ本体にはインデックス行も無いので、コンピューターにはやさしくても人間にはわかりにくいですね。

 

使い方はReadMeを参照します。Byte-by-byte Description of file: catalogという行から下がデータのインデックスの説明になっています。

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 つまり輝星星表の何文字目から何文字目までが何のデータなのかという説明です。一番上のデータの場合、「星表の1文字目から4文字目は輝星星表における星の番号で、HRというラベルです」という説明になっています。星の名前を指し示すとき、カタログの番号が併記されることがあり*2、例えば"HR 2491"といえば輝星星表の2491番の星*3ということになります。

 

5文字目から14文字目まではバイエル符号やフラムスティード番号、

76文字目から90文字目まではJ2000の赤経赤緯

103文字目から107文字目までは実視等級が割り当てられています。

 

後は好きなプログラムで読み込むなどすれば良いでしょう。

一例としてExcelで区切り文字数を指定して読み込み、列ごとのラベルを付すと以下のようになります。f:id:love_and_sessue:20181018165800p:plain

二列目はバイエル符号やフラムスティード番号があったりなかったりするので、この列のデータを利用する際は少し整理・分割したほうが良さそうです。赤道座標はReadMeの記載通りに時・分・秒などで区切ってそれぞれに列を割り当てましたが、列をまとめて十進数表記にしたいケースも多いでしょう*4

ちなみに最終列(197文字目)は注釈の有無を示すもので、 * が付されている行については notes.dat.gz に注釈があります。

 

 

ヒッパルコス星表の取得のやり方はこちらを参照してください。

coelostat.hatenablog.com

*1:7等前後もちょっと含まれている

*2:星に固有名がなければカタログ上の番号を示す他ない

*3:ちなみにシリウスです

*4:時分秒および度分秒の座標を十進数の角度表記に変換したいときはこちらを以下を参照

赤経・赤緯を時分秒・度分秒から十進法表記に変換する(逆もあり) - planet;nakanotori

黄鉄鉱の経年変化の記録

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黄鉄鉱の光輝を損なわない保存を考えるため、保存方法ごとの経年変化を観察します。

 

❏黄鉄鉱について❏

黄鉄鉱 - Wikipedia

Pyrite Mineral Data

 

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ちいさなスペイン産黄鉄鉱の六面体結晶を3個用意しました。これで3パターンの保存方法を比較します。下処理として表面は軽く磨き、無水エタノールで指紋を拭き取ります。

 

3つのサンプルはそれぞれ、

A  普通のサムネイルケースに収納。よくあるプラスチック製のケースで、密閉性は無し。ケースに固定せず、結晶をそのまま中に置いただけの状態。

シリカゲルと共にチャック付きビニール袋に封入。袋は念のため二重に。シリカゲルは食品の保存用などとして一般的に売られているもの(新品)。せんべいの袋に入っていたものの再利用ではない。

C  新聞紙に包む。一昨年くらいの日経新聞

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これらを全て、机の木製キャビネットの引き出しに入れて経年変化を観察していきます。日本の関東地方での実験です。開始日  2018年7月8日

 

このエントリーに追記という形で経過観察を記載します。観察の間隔は半年毎を考えていますが、様子を見ながら適切なタイミングを掴んでいきたいと思っています。

 

 

蛍光鉱物用のライト(UV-A/C)をつくる

注意:この記事では眼や皮膚に有害な光源を扱います。また、感電の可能性もあります。試される場合は各自でリスクを判断し、適切な防護策と自己責任の元で作業を行ってください。

 

市販されているハンディサイズのブラックライトを改造します。鉱物の蛍光/燐光を観察するために、UV-A(長波長紫外線)とUV-C(短波長紫外線)の両方が使えるライトにします。*1

 

お買物リスト

他に、単3電池4本。ポリカーボネイト製などの紫外線をカットできるゴーグルなど。

 

 ライトは安く売っているブラックライトの蛍光管と白色LEDが使える灯具を利用します。このLED部分をブラックライトLEDに付け替えます。あとは蛍光管を殺菌灯(これがUV-C光源)に替えれば二種類の波長を切り替えられるライトの出来上がり。

 

蛍光管の取替えは簡単なので、今回の図画工作のメインはLEDの換装です。

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 用意したLEDは日亜化学製。ピーク波長は375nm。キーホルダー型のLEDライトに使われているものです*2

 

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肝心の灯具は700円しない安いもので、製造国は不明。OEMで複数のルートから出ており、値段やパッケージは色々あるようです。とりあえずAmazonで安いものを選択。

 

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 動作は正常。スライドスイッチの感触は曖昧ですが、きちんと動作。LEDの方も点灯を確認。

 

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 分解を開始。まず蛍光管を受ける白い部分を外します。蛍光管の下の反射材を取ると、6箇所のスリットがあり、黒い部分の爪で固定されているのが分かります。私はここで爪の一本を折ってしまったので、注意が必要です。また、白い部分を外すと蛍光管につながる電極が露出しますが、電源を入れると交流200Vを超える電圧がかかります。電池は必ず外して作業してください。

 

電池蓋を外すと内側からストラップを引き抜けます。すると背中を止めている部品や、電池蓋の反対側のフタ(LED用の穴がある)が取り外せ、3枚おろしのようになります。 

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 とりあえず分解が終了した状態。簡易な構造ながら一本もネジを使っていない、量産コストを意識した設計。

 

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 心臓部の基板。トランジスタとトランスで発振・昇圧する回路*3。ついでに直流の低圧部分からLEDにつないでいる。基板の裏、ハンダ付けの質は値段なりのもの。リード線も千切れてしまいそう。

 

LEDは吸い取り線で外し、新しいものに交換。そのほか、気になる部分もハンダ付けし直し。リード線は鋭角に折れない向きで付け直し。あとは元通り組み立てるだけです。

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 LEDの点灯を確認&蛍光管は殺菌灯に変更しました。

 

ここで問題が発生。殺菌灯で適当な標本を照らしたら、蛍光しない。実は蛍光管部分を覆う透明なプラスチック製のカバー(ポリカーボネート?)、可視光や通常のブラックライトは透過してもUV-Cに対して不透明らしく、外せば蛍光しました。

 

そういうわけで、テスト撮影した鉱物写真たち

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ハイアライト(メキシコ産)
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灰重石(喜和田鉱山)※フィルター使用

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ユークリプト石(中国湖南省産)

このままでも使えますが、有害な波長域の光が全方向に発射されるのは望ましくないので、照射範囲を絞るカバーが欲しいところです。

 

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 元のカバーがUV-Cを透過しないならそこに穴を開ければ丁度いいので、穴あけ加工をしました。手持ちのフィルターが5cm角なので穴の長さも5cm程度で良かったのですが、加工時にはそのことを考えていませんでした。

 

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 殺菌灯の可視光成分が眩しいことと、このプラスチック素材がUV-Cをどの程度カットしているのかわからない*4ので、一応裏側にアルミ箔を貼り付け。これで出来上がりです。

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透明なカバーだとアルミ箔の隙間からどうしても可視光が漏れてくるので、裏側から黒の塗料で塗装しました。

 

*1:ただし、水銀線の可視光の影響をカットできないため、微弱な蛍光を見たいときは可視光カット・紫外線透過フィルタを使用する必要があるかと思います。市販のミネラライトが高価なのはほとんどこのフィルターに要するコストだと思います。

*2:

これも鉱物標本の蛍光の確認に使えます。

*3:このタイプの仕組みを解説しているサイトを参考までに。

http://ecwkit.nomaki.jp/shiryou/small/keikoutou.htm

*4:鉱物の蛍光の有無だけでは、どの程度カットしているのか=どの程度漏れ出ているのか判断できない