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天文・鉱物・その他。調べたことや自分用のメモなどを書きます。

蛍光鉱物用のライト(UV-A/C)をつくる

注意:この記事では眼や皮膚に有害な光源を扱います。また、感電の可能性もあります。試される場合は各自でリスクを判断し、適切な防護策と自己責任の元で作業を行ってください。

 

市販されているハンディサイズのブラックライトを改造します。鉱物の蛍光/燐光を観察するために、UV-A(長波長紫外線)とUV-C(短波長紫外線)の両方が使えるライトにします。*1

 

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他に、単3電池4本。ポリカーボネイト製などの紫外線をカットできるゴーグルなど。

 

 ライトは安く売っているブラックライトの蛍光管と白色LEDが使える灯具を利用します。このLED部分をブラックライトLEDに付け替えます。あとは蛍光管を殺菌灯(これがUV-C光源)に替えれば二種類の波長を切り替えられるライトの出来上がり。

 

蛍光管の取替えは簡単なので、今回の図画工作のメインはLEDの換装です。

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 用意したLEDは日亜化学製。ピーク波長は375nm。キーホルダー型のLEDライトに使われているものです*2

 

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肝心の灯具は700円しない安いもので、製造国は不明。OEMで複数のルートから出ており、値段やパッケージは色々あるようです。とりあえずAmazonで安いものを選択。

 

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 動作は正常。スライドスイッチの感触は曖昧ですが、きちんと動作。LEDの方も点灯を確認。

 

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 分解を開始。まず蛍光管を受ける白い部分を外します。蛍光管の下の反射材を取ると、6箇所のスリットがあり、黒い部分の爪で固定されているのが分かります。私はここで爪の一本を折ってしまったので、注意が必要です。また、白い部分を外すと蛍光管につながる電極が露出しますが、電源を入れると交流200Vを超える電圧がかかります。電池は必ず外して作業してください。

 

電池蓋を外すと内側からストラップを引き抜けます。すると背中を止めている部品や、電池蓋の反対側のフタ(LED用の穴がある)が取り外せ、3枚おろしのようになります。 

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 とりあえず分解が終了した状態。簡易な構造ながら一本もネジを使っていない、量産コストを意識した設計。

 

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 心臓部の基板。トランジスタとトランスで発振・昇圧する回路*3。ついでに直流の低圧部分からLEDにつないでいる。基板の裏、ハンダ付けの質は値段なりのもの。リード線も千切れてしまいそう。

 

LEDは吸い取り線で外し、新しいものに交換。そのほか、気になる部分もハンダ付けし直し。リード線は鋭角に折れない向きで付け直し。あとは元通り組み立てるだけです。

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 LEDの点灯を確認&蛍光管は殺菌灯に変更しました。

 

ここで問題が発生。殺菌灯で適当な標本を照らしたら、蛍光しない。実は蛍光管部分を覆う透明なプラスチック製のカバー(ポリカーボネート?)、可視光や通常のブラックライトは透過してもUV-Cに対して不透明らしく、外せば蛍光しました。

 

そういうわけで、テスト撮影した鉱物写真たち

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ハイアライト(メキシコ産)
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灰重石(喜和田鉱山)※フィルター使用

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ユークリプト石(中国湖南省産)

このままでも使えますが、有害な波長域の光が全方向に発射されるのは望ましくないので、照射範囲を絞るカバーが欲しいところです。

 

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 元のカバーがUV-Cを透過しないならそこに穴を開ければ丁度いいので、穴あけ加工をしました。手持ちのフィルターが5cm角なので穴の長さも5cm程度で良かったのですが、加工時にはそのことを考えていませんでした。

 

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 殺菌灯の可視光成分が眩しいことと、このプラスチック素材がUV-Cをどの程度カットしているのかわからない*4ので、一応裏側にアルミ箔を貼り付け。これで出来上がりです。

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透明なカバーだとアルミ箔の隙間からどうしても可視光が漏れてくるので、裏側から黒の塗料で塗装しました。

 

*1:ただし、水銀線の可視光の影響をカットできないため、微弱な蛍光を見たいときは可視光カット・紫外線透過フィルタを使用する必要があるかと思います。市販のミネラライトが高価なのはほとんどこのフィルターに要するコストだと思います。

*2:

これも鉱物標本の蛍光の確認に使えます。

*3:このタイプの仕組みを解説しているサイトを参考までに。

http://ecwkit.nomaki.jp/shiryou/small/keikoutou.htm

*4:鉱物の蛍光の有無だけでは、どの程度カットしているのか=どの程度漏れ出ているのか判断できない