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天文・鉱物・その他。調べたことや自分用のメモなどを書きます。

アンモナイトの標本を樹脂封入した話

黄鉄鉱化したアンモナイト化石を樹脂に封入したのでメイキングです。 

用意したものリスト

アンモナイト標本 / 2液性レジン(エポキシ樹脂) / 紙やすり/ ピカール

シリコン型 / 真空槽&真空ポンプ / デジタルスケール / その他

  

構想・準備・試作

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黄鉄鉱化したアンモナイトの標本(1000円くらい)を衝動買いしてしまった。可愛かったがしばらくするとカットされた面が黒ずんできてしまい、保存に気を使うよりもいっそのこと樹脂に封入してみてはどうかという気持ちになる。

 

樹脂は日新レジンのクリスタルレジンNEOを使用。黄変しにくいのがウリらしい。

 

樹脂といえば気泡。気泡といえば真空脱泡。→手動真空槽の製作

 

テストでレジンを硬化させてみるも失敗。混合に1g単位でしか量れないキッチン用スケールを使用していたため、混合比がまずかったのか硬化不良を起こしてしまう。秋葉原のラジオデパートで1000円しないデジタルスケール(0.01g単位で量れる)を見つけたので購入。 問題は解決。↑見た目はこれとほぼ同じなので、OEM元から直接出てきたのかも。*1

  

本番

いきなり硬化前のレジンに標本をドボンでは標本が底まで沈んでしまう*2。シリコン型に標本を固定したい高さまでレジンを入れて硬化、そこに標本を乗せて再びレジンを注入という段取りらしい。

この手順は以下のサイトを参考にした。

クリスタルレジン、昆虫標本 |クラフトレジンは日新レジン

 

まずはアンモナイト標本を研磨して黒ずみを除去した。研磨中はすこし腐卵臭がした。

その後水洗い&エタノールで洗浄と脱脂。

 

アンモナイト標本は形状が複雑で空洞もあるため、常圧で気泡を除去するのは難しく、真空脱泡を行った。標本下部に気泡が溜まる可能性を考え、注型前のレジンの中に標本を入れて下ごしらえ的な脱泡を行った。殻の小部屋(気房)から気泡が大きくなって出て行く様は無色のイクラが生まれてくるかのようだった。

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真空引きをしていると、アンモナイトから黒いカスがいくつも出てきてしまうアクシデントがあった。なるべく除去したが、少し残ってしまった。黄鉄鉱の単純な結晶ならともかく、元のアンモナイト化石には生体組織由来の細かい空洞があり、真空引きによって多少の組織が崩れるというのは冷静に考えればありそうなシナリオ。事前に想定していなかった。*3

ある程度の脱泡が済んだらアンモナイトごと型に注ぎ入れる。(アンモナイトはソフトランディング出来るようにピンセットでつまみながらそっと移し替えた)

 

今回は標本を斜めに角度を付けて固定したいと思い立ち、下図の様に型の下になにかを挟んで斜めにした状態で1段目を硬化、その後で標本を乗せて2段目の硬化をするという段取りにした。

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行った手順

大した角度ではないので斜めのエポキシの上に標本を置いても問題ないだろうと高を括ったら硬化待ちの間にずり落ちるようになってしまった。ずり落ちを考慮して少し高い位置に修正したら、今度はそのままの位置で硬化してしまったので中心から外れてしまった。

 

手間はかかっても下図のように斜めの状態で硬化を待って標本を固定させ、それから水平にして3段目のレジンを注型するべきだった。むしろ斜めにしなくてもよかったかもしれない。(元も子もない)

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こうすれば良かった、というシナリオ

 

硬化が完了して型から取り出した段階。表面張力の影響でバリができている。

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型に沿ったバリが残る

バリはある程度までカッターで削り、そこから先は紙やすりで研磨する。 バリの関係ない面もシリコン型の面精度が今ひとつなので磨く。バリのある面は#80程度の粗いヤスリから、バリの無い面は#400程度から始めて、徐々に目の細かいヤスリに変えながら#2000程度まで磨く。下の写真は#800から#2000までのもの。 

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 #1500の写真にあるバツ印は面を均等に磨けているか確認するためのもの。均等に磨けていれば全てのバツ印が同程度に削れていく。平らな板の上に敷いたヤスリの上で磨いていても、意外と力は偏ってしまう。目が細かくなってくると研磨に時間がかかるので#1200か#1500のどちらかは省略してもよかったかもしれない。

 

最後はピカールなどの研磨剤を使って磨くと再び透明な面が現れる。 

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 満足したら完成。

*1:こちらが0.1g単位での計量なのは販売者的に2桁目の精度が気に入らなかったからだと勝手に予想

*2:レジンより比重が軽いものであれば浮いてしまう

*3:気泡をフィルターのようなもので濾し取る方法があるらしいことを後から知ったので、真空脱泡以外のアプローチを試してみる価値はありそう