FlashForgeのAdventurer3で、本来サポートしていないTPUフィラメントを使用して印刷します。 軟質素材が出力できれば3Dプリンターの活用の幅が広がるので、是非とも使ってみたい材質です。
■TPU(熱可塑性ポリウレタン)とは?
軟質で弾力性があり、摩擦はゴムっぽい素材ほどではない。印刷時の温度設定はだいたいPLAと同じでOK(フィラメントの製造元次第かも)。
スライサーの設定はこの記事を参考にしました↓
また、フィラメントは上の記事で使用されているのと同じものにしました。
同じ3Dプリンター、同じフィラメント、同じ設定なら失敗せずに済むはず…
…失敗しました。最初は良くても一層目の途中でヘッドからほとんど樹脂が出てこなくなるため印刷物がスカスカになり失敗。何度か試して、だいたい同じ所でつまづきました。原因はエクストルーダーの中でフィラメントが曲がり、それ以上送り出せなくなる為のようです。TPUの柔らかさがここでは仇になってしまいました。
スライサーでの試行錯誤(温度設定、押出量など)は効果がなく、最終的には物理的な手法で解決。エクストルーダー周辺でフィラメントがたわむことが原因のようなので、エクストルーダー手前でフィラメントを軽くつまみ、常にピンと張るよう抵抗をかけながら*1プリントすると無事に印刷することができました。ずっと摘んでいるのはつらいので、エクストルーダーからぶら下がったフィラメントにクリップで軍手の片方*2を留めました。
要するにエクストルーダーがフィラメントを押し出す向きの反対方向へ、エクストルーダーがめげない程度に少し張力がかかっている状態にすれば押し出しが安定するようです。
逆に、今まで何度も失敗していた理由は反対方向の張力がほとんどかからない状態だったから…のようです(多分)。Adventurer3は純正の500g用リールより大きなものは本体に入らないので、とりあえず本体天面にTPUのリールを置いてフィラメントを長めに出しておき、エクストルーダーには僅かなフィラメントの自重のみがかかっている状態でした。私が失敗したのはこの点が効いているのではないかと思っています。
ところでテスト段階ならともかく指でずっとつまんでいるのは間抜けなので、適度な抵抗を与えることの出来るリールホルダー的なものを作ったほうがよさそうです。
さっそくTPUで作りたかったものを印刷
TPUが使えるようになったので接眼鏡用のキャップを印刷してみた。なくしやすいパーツなので自家栽培できるの便利… pic.twitter.com/JzxxW3Z6bt
— はつしま (@love_and_sessue) 2020年7月19日
この手のキャップ類は無くしやすくバラで入手しにくいので、家で増やせるようになると便利です。
次はKasaiのPico8用のキャップ。
Pico8に元々付いているものはヒンジでパカっと開く形式になっていて、観測時に取り外す必要がないという点は良かったけれど、開いたフタがぶらぶらしているのが気になるのでかぶせ式のシンプルなキャップを印刷しました。
本質的に接眼鏡のキャップとやっていることは同じですが、より広い面積の平面をもつ大きなものでも綺麗に安定して出力できました。ただしヘッドのスピードをかなり落としているため、仕方ないことですが相当時間がかかります。
次は電源ケーブルの根本とかにある、鋭角に折れないようにするアレ
家にある家電製品を観察すると形状は意外と様々ですが、こんな感じにしました。今までは単純すぎで印刷の難易度が低かったため検証材料としてはイマイチでしたが、すこし複雑なのでうまく行くかは不明。
…そんなわけで意外とあっさり印刷出来ました。2つ作りました。リブの間に挟むサポート形状はどちらもライン型ですが、ポリラインとグリッドをそれぞれ設定しました。結果はどちらでも大差なし。サポートを取るのは細かさゆえの面倒がある一方で、柔らかいためカッターでさくさく作業が出来ました。サポートついでに本体まで切ってしまいそうな点に注意。
柔軟性もちょうど良いので実用出来そうです。