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天文・鉱物・その他。調べたことや自分用のメモなどを書きます。

天体撮影とLynkeos

天体写真のスタックや画像処理に使うLynkeosというソフトについて書きます。

 Mac用(10.6以降)です。 公式はこちらへ→ Lynkeos home page

 

youtu.be

まずは使用法を解説した動画。Lynkeosのチュートリアル動画はなぜか無音のものばかりですが、シンプルなソフトなので「見て盗め」式で事足りてしまうのでしょう。とはいえ日本語で書かれた情報が少ないので、ここで簡単にまとめます。基本的な内容は公式のWikiに準拠。

 

基本的な作業工程は

読み込み(Lists)

   ↓ 撮影した画像の読み込み。連番の静止画でも動画でもよい。

フレームの位置合わせ(Align)

   ↓ 画像の基準になる点を指定し、各フレームに写っている天体が同じ位置に来るように調整。

品質の解析(Analyse)

   ↓ フレームごとの品質の判断。品質の低いフレームは除外する。

スタック(Stack)

   ↓ 位置を揃えて品質で選別にかけたフレームを合成して一枚の画像に。

画像処理(Deconvolution/Unsharp mask...)

   ↓ コントラストやシャープさの調整。

という順番です。

 

例1:静止画複数枚からのスタック

 まず、連続して撮影した普通の写真で試します。

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jpeg撮って出しの冬の大三角〜オリオン座の写真を使用します*1。三脚も使わず、柵の上に置いたカメラで連続して撮った9カットの写真です。レンズはキットレンズ(広角端)にソフトフィルターを付けたもの。僅かに日周運動の影響で星の位置がズレています。比較明合成すれば短いながらも星の軌跡のわかる写真となります。

 

まずはLynkeosを起動し、ファイルをそのまま読み込みます*2ドラッグ&ドロップで放り込めば完了。

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読み込んだファイルが一覧に表示されます。 ファイルをクリックして選択状態にすれば右側に画像が表示されるので、確認もできます。

 

Alignをクリックします。星のズレを読み取るために、サンプルとなるエリアを選択します。画像の上でドラッグをすれば赤い枠で囲えます。ここではシリウスとその右下のおおいぬ座βを選択しています。

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Referenceというチェック項目は、位置合わせの基準を意味します。一つの画像にしかチェックが入れられません。このチェックが入った画像に他の画像の位置を合わせます。

Specificという項目は全ての画像に設定できます。デフォルトでは他の画像を選択しても赤い枠は動きませんので、星の動きが大きい場合は枠から外れてしまいます。Specificのチェックが入っていると各画像に対して赤い枠の位置を設定できます。Optionキーを押しながら赤い枠をドラッグすると、自動的にSpecificになります。

 

この例では使用する画像の枚数が少ないのでAnalyseは飛ばしてStackに移ります。右の窓で最終的な画像のサイズを赤い枠で決めてStackをクリックすると、あとは処理が終わるのを待つだけです。

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Double sizeというチェックを入れると、スタック時にピクセルを水増ししてくれるようです。どこまで有効なのかは不明。DeconvolutionやUnsharp maskで画像処理もできますが、ここでは割愛します。最後にSave imageで画像を保存します(形式はtiff)。

 

処理前のReferenceの画像と処理後の画像のミンタカ周辺を拡大してみた画像です。

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左が処理前、右が処理後

画像のノイズがきれいになっているのがわかります。

 

汎用の画像ソフトでコントラストや色の調整を行えば下の写真のようになります。

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例2:動画からのスタック

今度は惑星の画像を作成します。星野写真なら通常の画像ソフトでも処理可能ですが、ここからはLynkeosの面目躍如です。

 

天体望遠鏡で拡大撮影*3した木星の動画です。合成焦点距離はおよそ9500mm*4

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読み込みかたは静止画のとき同じです。何も考えずドラッグ&ドロップで放り込みます。

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Alignでは木星を囲って処理をします。

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次はAnalyse。位置の揃った木星をふたたび囲み、Analyse開始します。

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 画像のリストのいちばん右の列の"Quality"という項目に、自動的に数字が並びます。これが解析された各コマの品質です。

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 Autoselectのスライダーではコマの選別のしきい値を設定します。ここで定めた数字未満のコマは自動でチェックから外れ、スタックの対象になりません。もちろん、手動でコレはないだろというコマを除外することもできます。

 

Stackを行います。出来上がった画像は明るくなりましたが、ぼんやりしています。

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次に画像処理に入ります。

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 gammaやRadius、Gainを操作して画像を調整します。徐々に木星の縞や大赤斑が認められる程度に浮き上がってきました。他にも調整する項目はありますが、やり過ぎると動作が不安定になりやすいため程々にします。

 

完成した木星の画像です。

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 処理をかけ過ぎると画像処理臭さが出てしまうため、バランスが難しいです。今回の目的は大赤斑を確認すること、木星が極方向よりも赤道方向に直径が大きいことを確認する点にありますので、多少の臭みには目を瞑ります。
 

撮影に使用した望遠鏡は6cm屈折のf=800mmという小さなもの、空は肉眼で3等星が見えれば御の字といういまいちな環境ですが、ささやかな遊びを拡張する程度には楽しめるようです。

*1:近隣の建物を避けるためにトリミングしています。光害がひどいので、星の数はあまり多くありません。

*2:ファイル名が変ですが気にしないでください

*3:直焦点ではなく、天体望遠鏡の接眼レンズから出た像をカメラのセンサーに当てる撮影方法です。ちなみに今回は接眼レンズの前に天頂プリズムを挟んでいます

*4:拡大撮影時の合成焦点距離の計算方法はこちらのブログ記事を参考にしました↓

hoshi2.hatenablog.com

(同じはてなブログでしかも同じデザインでした!